「依存症に完治はない」とよく言われます。ショッキングな言葉ですが、依存症になればその後もずっと病気と付き合っていかなければならないことは事実です。とはいえ、死ぬまでずっと薬を飲んだり病院に通い続けなければならないわけではありません。依存対象との距離を保てるようになれば、他の人と変わらない普通の生活を送るまでに回復します。
回復とは、今まで頼りにしていた依存対象を手離しても動じずに生きていけることをいいます。
アルコール依存症であれば、何か困難が生じた際にお酒に逃げずに問題解決に取り組める、飲みたくなっても適切な対処法を用いてその場をしのげる、家庭や仕事や趣味などお酒よりも大事にしたいもののために時間を使えるといった状態が回復像の1つとして考えられます。
回復とは、今まで頼りにしていた依存対象を手離しても動じずに生きていけることをいいます。
アルコール依存症であれば、何か困難が生じた際にお酒に逃げずに問題解決に取り組める、飲みたくなっても適切な対処法を用いてその場をしのげる、家庭や仕事や趣味などお酒よりも大事にしたいもののために時間を使えるといった状態が回復像の1つとして考えられます。
しかし、最初から最後まで何の困難も経験せずに回復に向かう人はいません。何度も再飲酒を経験するでしょう。例えば断酒を始めて3ヵ月経過した頃、眠れない日々が続いてついにチューハイ缶を1本飲んでしまったとしますが、依存症治療においてこれはスリップと言います。問題行動を再びやってしまうことであり、必ずしも連続飲酒や再発を意味しません。つまり、スリップしたからといって治療前の状態に戻るわけではなく、むしろこの一度の失敗を再発防止のヒントとして捉えることが重要です。
スリップの引き金になったものは何か、どのような思考が飲酒に向かわせたのか、他にどのような対処法があったのかなど、治療の場で正直に話し検討しましょう。この作業を行わないと、依存症の再発に繋がる可能性が高くなります。一度の再飲酒を隠そうと家族へ嘘をついたり通院を中断してしまうと、後ろめたさや自己嫌悪、投げやりな気持ちからさらに飲酒を続けるかもしれません。スリップの頻度が増すほど飲酒欲求も強くなってきます。習慣化し日常の一部となっているお酒という存在は、本人が思う以上に大きなものです。どんなに治療の意思が強くても、脳や身体がお酒を求めています。
一人でアルコール依存症の回復を目指すには荷が重いでしょう。病院や自助グループ、依存症のことを理解している家族など、周囲のサポートを得ながら回復に向かっていくことが望まれます。