当院は入院設備を持たないため、外来通院での治療となります。アルコール依存症の治療で一般的なものは、薬物療法と集団精神療法です。

1、薬物療法

① 断酒補助薬(レグテクト)

飲酒欲求そのものを軽減させる効果があります。既に断酒している状態で服用すれば飲酒欲求が抑えられるため、断酒が安定します。

② 飲酒欲求低減薬(セリンクロ)

いきなり断酒することが困難であり段階的に断酒を目指すとき、または減酒を目指すときに服薬します。飲酒に対する欲求が減るためにこれまでより少ない飲酒量で満足できます。詳しくは減酒ページへ

③ 抗酒剤(シアナマイド、ノックビン抗酒剤)

断酒を目的に服薬します。アセトアルデヒド脱水素酵素の働きを阻害することで二日酔いの状態を作り出します。そのため抗酒剤を飲んでから飲酒すると、激しい動悸、吐き気、頭痛といった症状が生じます。この不快感から、患者さまは抗酒剤を服用しているときの飲酒を避けるようになります。

④ 不眠に対する薬物療法

アルコール依存症の方に多い飲酒目的は、夜眠れないことによる寝酒です。しかし実際にはお酒は眠りの質を下げてしまうため、不眠と飲酒は悪循環です。この場合は睡眠薬を処方し、お酒が無くても健康的な生活習慣を維持できるようにします(その際には依存性の少ないベルソムラやデエビコがおすすめです)。また、気分の落ち込みや過剰な不安からお酒のリラックス効果を目的に飲酒する方に対しては、抗うつ薬や抗不安薬を処方することもあります。服薬することで不適切な対処行動である飲酒を避けることができます。

2、集団精神療法

毎週 火曜日 18:40~20:30
毎週 土曜日 10:20~11:50
同じようにお酒による問題を抱えている他の患者さまと一緒にこれまでの生活を振り返り、これからの健全な生活の送り方について考えます。他者の話を聞くことで、一人じゃないという安心感や自分も回復できるんだという自信を得ることができます。

3、集団認知行動療法

毎週 火曜日 19:00~20:30
認知行動療法に基づいたテキストを使っています。再飲酒の引き金を検討し対処行動を考える、今後の目標とそのために自分ができる行動を具体的に考えるといった内容で構成されています。具体的に自分の思考や行動について検討できるため、依存症の回復に役立つ効果が期待できます。

治療期間について

治療期間については、上記治療を受けながら概ね2年ほど通院を続けます。しかし、そもそも重症(離脱症状が酷い、連続飲酒がとまらない)の方や通院するうちに状態が悪化してしまった場合などは、入院設備のある病院と連携し入院治療を行ないます。
アルコール依存症の心理教育も兼ねた治療であれば3ヵ月、解毒入院のみであれば2週間程度です。

なお、一人では自由にお酒を飲んでしまう、本人の飲酒問題に家族が対応しきれないなど、単身生活に問題がある方の場合は更生施設やグループホームへの入所も検討します。生活指導員のもと、飲酒の引き金を避けた安全な環境で規則正しい生活習慣を築くことができます。
当院のグループホームについて詳しくはこちら

本人が来たがらない場合

まずは対応を相談するためにご家族が受診してください。アルコール依存症は家族とのコミュニケーション次第で問題行動は悪化も改善もします。本人との関係性が改善すれば治療に繋げる機会も増えるので今すぐご相談してください。