本人の重症度や特性を踏まえた様々な治療コースを提供

アルコール依存症を例にいえば、昔は依存症の病状が重度の患者のみを治療対象としていました。日本のアルコール依存症人口は230万人といわれていますが、これはそのうちたった2%のみを治療の対象にしていたことを意味します。しかし、この10年の間で依存症に対する考え方が変わってきています。症状の重い患者さまのみを診ていてもなかなか治療がすすまないことから、軽症の方も対象とするようになりました。2003年から使われているICD-10においては依存症の診断基準に重症度という視点はありませんでしたが、2013年に新たに使用開始となったDSM-Ⅴ では症状を軽度~重度で評価する項目が作られています。これもそういった流れによる変化でしょう。

現在のアルコール依存症治療では主体は軽症の患者さんです。そのために断酒という治療方針だけでなく節酒(減酒)という治療方針が加わり、重視されるようになりました。かつては飲酒により問題を起こした依存症者は刑務所へ行くこともありましたが、現在は仕事をしながら外来通院で治療する方が最も多く、もし病状が悪化した場合には入院、さらに病状が慢性化し仕事もままならなくなってしまった方がデイケアを利用します。環境管理を徹底する必要性から施設に入所するようなレベルの方は1%も満たないでしょう。このように、治療方針は病状の重症度によって変わります。また、重症度に伴い治療目的も変わってきます。

外来通院では心理教育、疾病教育を行います。入院治療では引き金から離れ生活リズムを整えること、デイケアでは就労のために必要なスキルや体力を身につけること、という風に。あるいは個人の特性、たとえば発達障害の診断も受けているなど合併症を有する方の場合は個別対応の治療法を重視します。

本人の重症度や特性を踏まえた上で適切な治療パッケージを提供することで、本人の治療意欲を高めることができるでしょう。当院には多様なプログラムがあるため、こういった対応が可能です。

本人が来たがらない場合

まずは対応を相談するためにご家族が受診してください。依存症は家族とのコミュニケーション次第で問題行動は悪化も改善もします。本人との関係性が改善すれば治療に繋げる機会も増えるので今すぐご相談してください。