治療方法
依存症の治療
依存症の治療は、治療を受ける本人の「行動を起こそう」とする段階を考慮して、変化のステージモデルでいう「無関心期」・「関心期」・「準備期」・「実行期」・「維持期」の5つの段階に応じて実施されます。本人がどの時期にいるのかによって、治療法が異なり変化します。
そこで、本人のいる段階に応じた治療を提供することが、依存症の治療において重要になってきます。また、依存症の治療は身体面、精神面、社会面の全ての面を意識した総合的なケアが必要となります。
次に示す治療方法は、依存症治療に用いられてきた代表的なものです。依存症の治療方法は多くの研究によって日々更新され、医療現場に反映されています。最適な治療法の選択に関しても検証が行われています。
1.「米国精神医学会治療ガイドライン 物質使用障害」の記述
このガイドラインには、治療効果をⅠ、Ⅱ、Ⅲという臨床的確かさのレベルで表して述べてあります。
Ⅰ.確かな臨床的裏づけをもって推奨される
Ⅱ.中等度の臨床的裏づけをもって推奨される
Ⅲ.個々の状況によっては、推奨されることもある
Ⅳ.記載のないものは、効果が確認できなかった
Ⅱ.中等度の臨床的裏づけをもって推奨される
Ⅲ.個々の状況によっては、推奨されることもある
Ⅳ.記載のないものは、効果が確認できなかった
アルコールに対して
コカインに対して
・認知行動療法
Ⅱ
Ⅱ
・行動療法
Ⅰ
Ⅱ
・精神力動的/対人関係療法
Ⅲ
Ⅲ
・短期介入
Ⅱ
・夫婦療法および家族療法
Ⅱ
・集団療法
Ⅲ
・自助グループ
Ⅱ
Ⅲ
注)これは精神療法の項目に関してのみなので薬物療法に関しては入っていません
2.米国の国立アルコール症研究所(NIAAA)での検証実験結果
米国の国立アルコール症研究所(NIAAA)が1989年に立ち上げた、アルコール依存症の治療モデルに関する大規模(史上最大とよく言われます)な多施設臨床試験(Project MATCH)では、認知行動療法、12ステップ強化法、動機づけ強化療法の3つの治療法の有効性が検証されました。この研究の成果から、3つの治療法には有意差はなく、どれを使用しても効果があることが実証されました。
3.研究者の論文によって効果が示されたもの
出典:Robert J.Meyers Ph.D. & Associates
治療方法を臨床効果の高かったものから順に列挙しています。
治療方法を臨床効果の高かったものから順に列挙しています。
Holder氏他
1991年
- 社会的スキル訓練
- セルフコントロール訓練
- ブリーフ動機づけ療法
- 行動的夫婦療法
- コミュニティー強化法
- ストレス・マネージメント
Miller氏他
1995年
- ブリーフ・インターベンション
- 社会的スキル訓練
- 動機づけ面接法
- コミュニティー強化法
- 行動契約法
- 嫌悪療法
Finny氏他
1996年
- コミュニティー強化法
- 社会的スキル訓練
- 行動的夫婦療法
- ジスルフィラム(治療薬)
- 他の夫婦療法
- ストレス・マネージメント
Miller氏他
2003年
- ブリーフ・インターベンション
- 動機づけ面接法
- アカンプロセート(治療薬)
- コミュニティー強化法
- セルフチェンジ
- ナルトレキソン(治療薬)
Miller氏他
2005年
- 認識行動
- コミュニティー強化法
- 動機づけ面接法
- リラプス・プリベンション
- 社会的スキル訓練
- 行動的夫婦療法
4.その他の治療方法として、次のようなものもあります
内観療法・・・日本で開発された治療法で世界中で行われています。
随伴性マネージメント・・・コミュニティー強化法と併用される事が多い。非常に効果的な治療法ですが、実行するのは経済的な問題があるために、なかなか実行されません。
随伴性マネージメント・・・コミュニティー強化法と併用される事が多い。非常に効果的な治療法ですが、実行するのは経済的な問題があるために、なかなか実行されません。