買い物依存症の原因・発症の要因
買い物依存症に陥る脳のメカニズム
依存症とは、ある物質の摂取やある行為を行うことで問題が生じてしまうにも関わらず、その行動をやめられなくなる病気です。「やってはいけないとわかってはいるんだけどやめられない」というコントロール不能の状態に陥ります。このような人に対し、かつては意志の弱さや倫理観の低さのせいであると思われがちで、精神的な病気であるという認識はほとんどありませんでした。しかし実際には脳の仕組みそのものが変化してしまっているのであり、条件さえ揃えば生まれや育ち関係なく誰でもなりうる病気なのです。
では依存症になるまでにはどのような経過を辿るのでしょうか。
どのような依存症も、始まりはちょっとしたきっかけです。買い物は日常生活において当たり前に行うものであるため、きっかけとなる場面はたくさんあります(お店に新商品が並んでいる、SNSで広告があがってくるなど)。後に依存症になる方も最初は一般的な買い物の仕方をしています。しかしある程度の期間過度な買い物(衝動買い、コレクション買いなど)を続けるうちに買う頻度や額が増えていき、それに伴い何らかの問題(対人的・経済的・身体的・精神的な問題)が生じます。健全な人であればこの時点で特別な買い物を控えることができますが、一部の人はそれができずに借金をしてまで買い物を継続します。この一部の人の脳にはある変化が起きています。
依存症の脳の仕組みを理解するには、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が不可欠です。ドーパミンは快楽物質であり、これが脳内に分泌されることで生き物は快楽や喜びを感じることができるのですが、過度な買い物という行動でもドーパミンは分泌されます。つまり、過度な買い物が習慣化すればするほどドーパミンが分泌される頻度も増え、快楽や喜びを感じやすくなります。
これだけ聞けば良いことだと思うかもしれませんが、恐ろしいのは神経伝達物質は有限なものであるということです。永遠に分泌され続けることはなく、すぐに枯渇します。すると、それまでの強烈な快楽が得られなくなるためにさらに買い物行動は促進され、ドーパミンは枯渇し、むしろ焦りや不安、退屈感といった不快体験が増えていく…という悪循環に陥ります。このレベルにまで達すると脳は快楽だけを求めて体に指示を出すため、簡単には抗えません。
このような経過を経て、「やってはいけないとわかっているんだけどやめられない」という依存が形成されます。