1、クレプトマニアの症状の特徴
たとえばこんな症状があります。
- 買い物するつもりで入店するが、いざ商品を目の前にすると盗ってしまう
- どうして盗むのかと問われても自分でもわからない
- 万引きしているときは何かに突き動かされるかのように動く
- お店に入ると監視カメラの場所や店員の動きが気になる
- レジがこんでいるのを見るとイライラし、「少しくらいなら」と盗む
- 監視の目をかいくぐって万引きがうまくいったときに高揚感、達成感がある。わざと見つかるリスクの高い状況で万引きを試みることがある
- 万引きに成功するとそれまでのモヤモヤがスカッとする
- 万引きに成功したときは安心するが、後々警察が来るのではないかと不安が続く
- 盗みをやめられないことに自己嫌悪を抱く
- 過去に何度も見つかり逮捕までされているのに万引きをやめられない
- 逮捕されることはわかっているのに、商品を見ると盗みたい気持ちが抑えられない
- 「損をしたくない」「もったいない」という考が強い
最初の頃は快感や、タダで物が手に入ったことのお得感を感じやすいかもしれませんが、あまりにも常習化すると盗むことが当たり前になり、行為に対し何も感じなくなる方もいます。「呼吸と同じ」という感覚で万引きをくり返していた患者さまもおり、それだけ病状は重いと考えます。
2、合併しやすい他の疾患
摂食障害:
特に神経性大食症との関連が強いといわれています。たとえば、摂食障害を患っている方は衝動制御に困難を抱えていること、強迫的なためこみ症状があること、嘔吐するために「どうせ吐く物にお金を払うのはもったいない」という思考の歪みがあることなど、万引き行動を促進しうる要因があります。
発達障害:
衝動制御の困難、こだわりの強さ、相手の立場に立って物事を考えることの困難など、万引き行為を促進しうる要因があります。なお、そもそもの知的能力が低く善悪の判断が困難な場合があり、その場合はクレプトマニアの治療というよりも周囲の理解や環境調整の方が重要となります。
うつ病:
うつ状態が一番ひどい時には外出さえできませんが、その状態から体調が右上がりに回復してきたタイミングで万引き行動に至る方がしばしばいます。「それまでたまっていたモヤモヤが解消される」と話す患者さまがいるように、感情の不安定さも影響していると考えられます。
なお、アルコール依存症、ギャンブル依存症、薬物依存症の方が依存対象を入手したり転売して金銭を得る目的で万引きすることもあります。その場合はクレプトマニアではなく、背景にある依存対象の治療が必要です。