ギャンブル依存症の原因・発症の要因
① ギャンブル依存症に陥る脳のメカニズム
依存症とは、ある物質の摂取やある行為を行うことで問題が生じてしまうにも関わらず、その行動をやめられなくなる病気です。「やってはいけないとわかってはいるんだけどやめられない」というコントロール不能の状態に陥ります。このような人に対し、かつては意志の弱さや倫理観の低さのせいであると思われがちで、精神的な病気であるという認識はほとんどありませんでした。しかし実際には脳の仕組みそのものが変化してしまっているのであり、条件さえ揃えば生まれや育ち関係なく誰でもなりうる病気なのです。
では依存症になるまでにはどのような経過を辿るのでしょうか。
どのような依存症も、始まりはちょっとしたきっかけです。ギャンブルは日常生活において当たり前に存在するものであるため、きっかけとなる場面はたくさんあります(電車の広告、職場の人からの誘い、深夜のバラエティ番組など)。後に依存症になる方も最初は遊びの範囲でギャンブルをしています。しかしある程度の期間繰り返しギャンブルを続けるうちに、頻度やかけ金が増えていき、それに伴い何らかの問題(対人的・経済的・身体的・精神的な問題)が生じます。健全なギャンブラーであればこの時点でギャンブル行為を控えることができますが、一部の人はそれができずにお金をおろしに行ってまでギャンブルを継続します。この一部の人の脳にはある変化が起きています。
依存症の脳の仕組みを理解するには、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が不可欠です。ドーパミンは快楽物質であり、これが脳内に分泌されることで生き物は快楽や喜びを感じることができるのですが、ギャンブルを行うことでもドーパミンは分泌されます。つまり、ギャンブルが習慣化すればするほどドーパミンが分泌される頻度も増え、快楽や喜びを感じやすくなります。
これだけ聞けば良いことだと思うかもしれませんが、恐ろしいのは神経伝達物質は有限なものであるということです。永遠に分泌され続けることはなく、すぐに枯渇します。すると、それまでの強烈な快楽が得られなくなるためにさらにギャンブル行為は促進され、ドーパミンは枯渇し、むしろ焦りや不安、退屈感といった不快体験が増えていく…という悪循環に陥ります。このレベルにまで達すると脳は快楽だけを求めて体に指示を出すため、簡単には抗えません。
このような経過を経て、「やってはいけないとわかっているんだけどやめられない」という依存が形成されます。
② 依存症になる原因は?
ギャンブル依存症は複数の要因が絡み合って発症に至るため、これが原因であると明確に述べることはできません。とはいえ、発症リスクを高める危険因子として認められているものはいくつかあります。
- 幼少期や青年期のギャンブル体験
- 遺伝と家庭環境(親がギャンブル依存症であること)
- うつ病、不安障害、注意欠陥多動性障害など他の精神疾患を合併していること
- ギャンブルを始めた初期に大勝ちした経験がある、ギャンブルにアクセスしやすいなどの環境
上記を満たすことで必ずしもギャンブル依存症を発症するとは限りませんが、その可能性は高くなるといわれています。
神奈川県からギャンブル依存症の「依存症専門医療機関」 として選定されました
依存症専門医療機関とは、依存症に係る所定の研修を修了した医師等が配置され、依存症に特化した専門プログラムを行うなど、依存症に関する専門的な医療を提供できる医療機関として、当院が神奈川県からギャンブル依存症の専門医療機関・依存症治療拠点機関に選定されました。