薬物依存症とは、薬物をくり返し摂取し続けることでだんだんと量や使用頻度をコントロールすることが難しくなり、やがて身体面や社会面で有害な結果が生じ、それにも関わらず自分で薬物使用を止めることができなくなる病気です。
1、症状の特徴
- 次にいつ薬物を使うか、日常的に考える
- 薬物使用時のことを思い出すとドキドキしたりそわそわする
- 周囲の人に嘘をついてまで薬物を使おうとする
- 薬物を使っていないときの性行為では物足りない
- 「1回だけなら大丈夫」と考え使用を始めるものの、結局連続で使ってしまう
- 執行猶予中、あるいは出所したばかりなのに薬物を使っている
- 主治医が自分の言うとおりの薬を処方してくれないと気分を害す
- 薬を服用した状態でないと外に出られない、人と話ができない
- よりたくさんの薬を処方してもらうために複数の医療機関を受診する
- 1日100錠の咳止めを服用する
クリニックに受診するほどの病状なのか、自分が薬物依存症なのかどうかなど、ご自身の状態が気になるという方はこちらのセルフチェックをどうぞ。基準点以上であれば、一度専門医に相談した方が良いかもしれません。お気軽にご相談ください。
2、離脱症状(禁断症状)とは
アルコール依存症と同様、直接的に身体に物質が投与される薬物依存症はその分離脱症状が顕著です。薬物が抜けて48時間以内に生じる早期の症状から、数日間後に生じる続くものまであります。
- 倦怠感
- 抑うつ気分、イライラ
- 過眠
- 手の震え
- 集中力の低下
- 食欲減退、増幅
- 不眠
- 幻覚
- 被害妄想(警察に追われている、監視カメラが仕掛けられているなど)
など、身体を動かすことがしんどい状態や、頭がおかしくなるような精神状態を体験します。そしてこの状態から手っ取り早く抜け出すために、また薬物を使用します。薬物でおかしくなった状態を薬物で回復させようとするのです。しかしこれは悪循環です。薬物を断ち続けるためには適切な治療を受けて離脱症状を乗り越えることが重要です。
3、合併しやすい身体疾患
短期でも長期でも、薬物を使えば身体に害が及びます。上記の離脱症状は短期的な影響ですが、使用した際に突然起こるものから使用期間が長くなるにつれ慢性的に続くものまであります。
- 急性心不全
- 高血圧
- 脳卒中
- 記憶障害
- 見当識障害
- 視力低下
- 肝臓障害
- 薬物性精神病(薬物の使用をやめた後でも感覚 過敏や幻聴、被害妄想、不眠、抑うつなどの症 状が残ること)
- 肝炎、HIV感染(注射器の乱用による感染)
当院の患者さまの中にも、薬をやめ始めてからボロボロになった歯の治療やC型肝炎の治療に通われている方がいます。せっかく健康的な生活を目指そうと気持ちを入れ替えても、身体的な不調を抱えているとそれだけで気持ちが落ち込んでしまいます(そのために気持ちも身体的不調も改善してくれる魔法の薬をまた求める、という悪循環に陥りがちです)。早いうちから依存症のサイクルを抜け出し、心も身体も健康でいることが重要です。
神奈川県から薬物依存症の「依存症専門医療機関」 として選定されました
依存症専門医療機関とは、依存症に係る所定の研修を修了した医師等が配置され、依存症に特化した専門プログラムを行うなど、依存症に関する専門的な医療を提供できる医療機関として、当院が神奈川県から薬物依存症の専門医療機関・依存症治療拠点機関に選定されました。